1月20日、秋葉原コンベンションホールにて、i*deal Competition最終審査会が開催された。
すでに各メディアが伝えているとおり、最優秀賞には株式会社フィールドシステム サウンドコード 事業化チームによる「“サウンドコード”と呼ぶ、符号化された音声により簡単に低コストでモバイルにURLを伝達する手段」が選出された。
またメディアスポンサー賞にはdropping, Inc.の「Penny - 携帯端末で動作する事、直感的なUI、学習機能、GPSとネットワークを活かしたソーシャル家計簿/生活ログソフト及びWebサービス」が、三井ベンチャーズ賞にはP&Kの「Ring Back Web(RB Web)」がそれぞれ選出された。
会場となった秋葉原コンベンションホールホールには、審査会の模様を見ることができる一般席が用意されたが、事前予約の時点で定員に達し、当日も満席。この盛況ぶりに同コンテストの注目度の高さが見られた。
会場にはi*deal Competitionを主催する三井ベンチャーズ代表/株式会社エム・ヴィー・シー代表取締役社長 長尾 収さん、Mitsui&Co.Ventures Partners, Inc. Investiment PartnerのVoytek Siewierskiさん、ITジャーナリストの林 信行さん、CNET Networks Japan編集長の別井貴志さん、アスキー総合研究所所長 遠藤 諭さんの計5名が審査員として列席。最終選考プレゼンテーションを見守った。
長尾 収さんによる開会の挨拶のあと、林 信行さんによる基調講演「iPhoneで開ける新しい展望」が行なわれた。
林さんは2008年のiPhone本体や対応アプリの販売実績を解説。iPhoneが占めているシェア“1%”の影響力の大きさを語った後、「iPhoneはこれまでにないプラットフォームであり、今後のIT業界の主戦場となるケータイ分野で中心的存在になる」と主張。その上で「日本はケータイ先進国。その持てる技術を発揮し、iPhoneで世界を変えていこう」と、最終審査会に選ばれた開発者と、会場に駆けつけた多くの開発者を鼓舞した。
そして、1次選考を勝ち抜いた5組による最終プレゼンテーションが行なわれた。各プレゼンテーションの概要は以下のとおり。
「Penny」はiPhone上で動作する家計簿アプリ。日常生活の重荷にならないように淡々と出費を記録できるように、「快適な使い心地」にこだわったUIと、GPSを駆使した予測入力が特徴である。
アプリ自体は無料で配布し、ユーザーの購入データを収集してマーケティングに利用したり、クレジット会社と提携して利益を得たりといったビジネスプランを提案した。しかし、同アプリ開発の本質は「家計簿はつまらないものだが、節約するために活用できておもしろい、いい家計簿ソフトを作りたい」というもの。軽妙なプレゼンテーションに会場は大いに沸いた。
関西大学の大学院生2人によるユニット「ジオモバ」は、「バスやタクシーをより便利に利用するケータイサービス」を紹介した。国内では鉄道に関する乗り換え案内アプリやサービスの提供は多いものの、バスやタクシーに関するものが皆無であることに着目した。
そこで、GPSを使った位置情報と端末による地図情報を使ってバスの路線案内・乗り換え案内や、現在位置にタクシーを呼び出す機能などを提供。ビジネスプランは、アプリの月額課金で収益を得るというもの。2人は通学時のバス利用に不便を感じてこのアイデアを思いついたということで、日々の生活に即したプレゼンテーション内容だった。
日本Androidの会会長の丸山さん、同事務局長の今村さんによる「クラウドを利用したマーケットサービスの提供」がプランの骨子。日本における通信販売の注文方法では、実はまだまだインターネットが使われていないことに着目し、次世代モバイル上のECサイト向けに決済手段の提供を狙っている。
その際、自社サーバではなくクラウド上のシステムを利用することでコストを抑えているのも特徴的。PCから商品データベースをテストサーバにアップロードし、実際に商品紹介ページが構築され、Android端末に表示されるまでの様子が披露された。
「サウンドコード」はURLに代表される短い文字列を、音声に載せて不特定多数の利用者に配信する技術。可聴域の音声を使うため、テレビやラジオ放送、音楽CDなどでも利用できる。
すでにPC版の符号化/解析アプリは開発済みで、デモンストレーションではその動作が披露された。今後は携帯端末に解析アプリを提供することを直近の目標とし、いずれはQRコードと同様に携帯端末の標準機能として採用されることを目標に掲げた。
「Ring Back Web」は、「メロディーコール」「EZ待ちうた」のような、カスタマイズされた呼出音の進化版。発信元のAndroidの端末画面に静止画や動画、Webページなど、さまざまネットコンテンツを表示できる。
電話の受け手がかけてくる相手に応じて表示コンテンツを自由に設定でき、自分のステータスや企業広告を表示したり、アフィリエイトの一手段として利用したりするといった構想が語られた。
全プレゼンテーションが完了後、審査が進む間にNTTドコモ フロンティアサービス部 アプリケーション企画担当部長 山下哲也さんによる基調講演「これからのケータイ:Androidが導く“オープンプラットフォーム維新”」が行なわれた。
講演内では「iPhoneやAndroidの登場は単なる技術・商品の進化だけでなく、さまざまな環境を変化させ、創発を加速させる状況を生み出しています」とする一方、「我々もこのオープンなAndroidをより広げていきたいと思っています」と、同社の今後の取り組みをやんわりと示唆した。
メディアスポンサー賞として、dropping, Inc.の「Penny - 携帯端末で動作する事、直感的なUI、学習機能、GPSとネットワークを活かしたソーシャル家計簿/生活ログソフト及びWebサービス」、三井ベンチャーズ賞にP&K「Ring Back Web(RB Web)」が表彰されたのちに最優秀賞の発表に移った。
そして、発表された最優秀賞は「“サウンドコード”と呼ぶ、符号化された音声により簡単に低コストでモバイルにURLを伝達する手段」。
審査員の1人である長尾さんは「まだ技術モデルが固まっていないものの、いろいろな可能性が感じられました。その点に期待し、審査員一同から高得点が与えられました」と評した。受賞者の津久間さんは「私たちの会社は本来デザイン会社ですが、この受賞が会社のターニングポイントになるかもしれません。とても光栄です」と受賞の喜びを語った。
審査会の最後に各審査員は以下のように講評を述べている。
遠藤 諭さん:「Penny」の家計簿というテーマは平凡ですが、将来的な可能性は大きく感じました。プレゼンもスマートで、メディアが選ぶ賞として評価しました。「Ring Back Web」は、似たサービスをすでに携帯キャリアが提供している中、これからどう業界に切り込んでいくかがポイントになるでしょう。
別井さん:閉会が近づいても、来場いただいた方がほとんど席を立たないところに、みなさんの真剣さが感じられました。来場者のみなさんには日本発のイノベーションがもっとふくらむように、今後も積極的に動いてほしいと思います。
林さん:個人的には2番目のジオモバさんのプランに興味を持ちましたが、日本の交通システムだけでなく、もっと世界へ視点を向けるとよりいいプランになると思います。
Voytek Siewierskiさん:iPhoneやAndroidはオープンプラットフォームでiモードとは違うものですが、iモードの黎明期にあった情熱と同じようなものが感じられました。このようなモバイルイノベーションの意識が絶えず続いていることをうれしく思います。
最後に長尾さんは、「半年にわたったこのコンテストですが、こういったイベントを開催するだけで価値があると強く感じました。応募していただいた皆さんはもちろんでしょうが、会場でプレゼンテーションを聞いた私もさまざまなアイデアが浮かんできました。また、どのプランにもまだまだ“のびしろ”が感じられました。視点を海外に向けてみる、アイデアをもうひとひねりする余地があるのではないでしょうか」と評して、i*deal Competitionを締めくくった。